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2012年4月15日 (日)

3.11以後を見据える時、吉本親鸞論によって開かれる道筋がある。――吉本隆明 著『吉本隆明が語る親鸞』(東京糸井重里事務所刊・12.1.16)

 吉本隆明の『最後の親鸞』(76年刊)が刊行された時の衝撃はいまだに忘れられない。吉本が論ずる親鸞は思想の豊饒さを湛えていたからだ。例えていうならば、「二十一世紀に向かって遠く投げ出した思想の砲丸」と中沢新一が表現したことに、それは尽きるだろう。以後、吉本は多くの親鸞をめぐる講演(二冊の講演集がある)を行っている。本書は83年から94年までの講演の中から五講演(一講演は単行本未収録)を精選している。語りの臨場感を持たせながら、あらたに起し直した文章は見事である。講演の音源を収録したDVD-ROMを聴きながら、読むことを勧めたい。吉本の「声」と「話し方」は実に独特である。四十年以上前に吉本の講演を初めて聴いた時、難解な論稿を発表していた思想家とは思えない朴訥さと体を傾けて畳みかけるように熱く語る姿に、驚くとともに感動したものだった。本書の講演も、変わらない熱い語り口で、その当時の感動が甦ってくる。
 親鸞は、戦乱や飢饉、あるいは大地震が起きた絶望的な時代を生きていた。だからこそ、3.11以後を見据える時、吉本親鸞論によって開かれる道筋があることに気づく。「死のほうから現在を見るという見方をすること」「向こうの方からこちらへ向かってくる視線で自分の現在とこれからのことを照らし出す」と語っていく吉本の言葉に打たれるのは、わたしだけではないはずだ。

(『通販生活』2012年 夏号)

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