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2006年7月22日 (土)

「秋山清紀行 7」

 「猫を叱る」という詩篇(一九三二年)がある。「母の夜のねむりをさまたげぬよう/夜中すぎにかえってきたぼくを、歓迎して/もつれて甘える猫を叱る。」というものだ。十九歳で上京した後、九州から呼び寄せて同居していた母への優しい想いとともに、猫への独特の眼差しがなんともいえない夜の雰囲気を醸し出しているいい作品だ。動物好きでもある秋山清は、二匹の猫と黒い犬一匹を飼っていたが、三四年から数年間にわたって、「山羊」を十数匹、自宅で飼っている。山羊の乳を売って生活の糧とするためだ。“山羊飼いの仕事”を始める前に、山羊をモチーフにした詩篇を書いている。「山羊の仔の/生れて十日目の野性は/人間にむかってたたかい挑む。」(三三年)という、やや激しい詩語に満ちたものだ。それが、翌年の作品になると、一転、「山羊を飼い/乳をしぼり/今年も半年ちかくすぎてしまった。/しらずしらず、この毎日だ。」となる。一連の、「山羊詩篇」といわれるものだ。激しさと静謐さは、時代の影を象徴している。三五年十一月、無政府共産党事件に連座して数日間、特高の取り調べを受ける。今後も起きうるであろう自分の不在によって世話が出来なくなることを考え、やがて山羊飼いをやめてしまう。 

(「秋山清ワールド・秋山清著作集Website」、『図書新聞』06.7.29号)

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